大阪高等裁判所 平成7年(ネ)1986号 判決 1996年11月28日
控訴人兼附帯被控訴人(以下「控訴人」という)
石川島興業株式会社
右代表者代表取締役
尾間信彦
右訴訟代理人弁護士
岡野良治
被控訴人兼附帯控訴人(以下「被控訴人」という)
堂本富美子
同
堂本晃代
同
大谷教代
右三名訴訟代理人弁護士
木村治子
同
松山秀樹
主文
一 被控訴人堂本富美子に対する本件控訴及び被控訴人らの本件附帯控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。
1 控訴人は、被控訴人堂本富美子に対し、金一一四六万八一六〇円及び内金一〇四六万八一六〇円に対する平成三年一二月六日から、内金一〇〇万円に対する平成七年七月三一日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 控訴人は、被控訴人堂本晃代及び同大谷教代に対し、各金九二四万六六七七円及び内金八四〇万六六七七円に対する平成三年一二月六日から、内金八四万円に対する平成七年七月三一日から各支払済みまで各年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。
3 被控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。
二 控訴人の被控訴人堂本晃代及び同大谷教代に対する本件控訴をいずれも棄却する。
三 本件附帯控訴費用を除く訴訟費用は、第一、二審を通じ、これを一〇分し、その一を被控訴人らの、その余を控訴人の、本件附帯控訴費用は被控訴人らの負担とする。
事実
第一 当事者の求める裁判
一 本件控訴について
1 控訴の趣旨
(一) 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
(二) 被控訴人らの請求を棄却する。
(三) 訴訟費用は、第一、二審を通じ、被控訴人らの負担とする。
2 控訴の趣旨に対する答弁
(一) 本件控訴を棄却する。
(二) 控訴費用は控訴人の負担とする。
二 附帯控訴について
1 附帯控訴の趣旨
(一) 原判決を次のとおり変更する。
(1) 控訴人は、被控訴人堂本富美子に対し、金二二五〇万六七七五円及び内金二〇四六万〇七〇五円については平成二年九月一二日から、内金二〇四万六〇七〇円については判決言渡しの日からそれぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(2) 控訴人は、被控訴人堂本晃代及び同大谷教代に対し、各金一一二五万三三八七円及び内金一〇二三万〇三五二円については平成二年九月一二日から、内金一〇二万三〇三五円については判決言渡しの日からそれぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(二) 訴訟費用は、第一、二審を通して控訴人の負担とする。
(三) 仮執行宣言
2 附帯控訴の趣旨に対する答弁
(一) 本件附帯控訴を棄却する。
(二) 附帯控訴費用は被控訴人らの負担とする。
第二 当事者の主張
当事者の主張は、次のとおり付加、訂正するほか原判決事実摘示(原判決五頁九行目から同七〇頁六行目まで)のとおりであるから、これを引用する。
一 原判決の訂正
1 文中「原告」を「被控訴人」と、「被告」を「控訴人」と各訂正する。
2 原判決六六頁七行目「三 抗弁―過失相殺」を「三 抗弁」と訂正し、同七行目と八行目の間に「1 過失相殺」を付加する。
3 同六八頁六行目「抗弁事実は否認する」を「(一) 抗弁1の事実は否認する。」と訂正する。
二 当審における新たな主張
1 同六八頁三行目と四行目の間に次のとおり付加する。
「2 損益相殺
被控訴人富美子は、労働者災害補償保険法に基づき労災保険年金合計七四三万七四六六円の、葬祭料五三万一八四〇円の各給付を受けており、右各金額を損害額のうち逸失利益、葬儀費用からそれぞれ控除すべきである。更に、労働組合から受取った四二万円も葬儀費から控除されるべきである。」
2 同六九頁末行の後に「(二) 抗弁2の事実(ただし組合からの四二万円を除く)は認める。」と付加する。
第三 証拠
証拠関係は、原審及び当審の証拠関係目録記載のとおりであるから、これをここに引用する。
理由
一 当裁判所の認定及び判断は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決理由説示(原判決七〇頁一〇行目から一二八頁五行目まで)のとおりであるからこれを引用する。
1 文中「原告」を「被控訴人」と、「被告」を「控訴人」と各訂正する。
2 原判決七七頁一〇行目から同七八頁一行目「開始すべきであるところ」までを次のとおり訂正する。
「以上の事実によれば、本件フォークリフトの作業を開始した時は、雨が降り暗くなりだし、まだ帰宅する者が出入口へ行くのにフォークリフトの左右のどちらも通行する可能性があり、運搬する床板はフォークリフトの爪をはるかにはみ出すものであるから、かかる場合花井としては床板を発見しやすくするためライトの点灯あるいは床板に目印等を付けるなどの措置をすべきであり、」
3 同七九頁三行目「ライトを点灯せずに」とあるのを「ライトを点灯するなどせずに」と訂正する。
4 同八五頁五行目「別紙」の前に「原判決添付」を付加する。
5 同一〇九頁五行目末尾に「成立に争いのない甲第三三号証によれば、世良医師は心電図の所見から冠動脈硬化症の可能性を推定しているものの、推定の域を出ていない。」を付加する。
6 同一一六頁五行目「本件全証拠」の前に「前記甲第三三号証の中に、飲酒による虚血性心疾患に起因する心筋梗塞又は心室性細動や粗動が発生して急性心不全となり突然死した可能性が最も高いとの世良医師の所見がみられるが可能性の域を出ず、その他」を付加する。
7 同一二〇頁五行目から六行目「認められないし、」までを次のとおり訂正する。
「なるほど、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる乙第一九号証(仕上班の仕上げ作業及び出荷作業の各実働時間と手待時間についての測定結果)によると、一日の仕上げ作業及び出荷作業各八時間労働のうち、仕上げ作業中の手待時間は合計一四九分、出荷作業中の手待時間は合計九五分であることが認められる。しかし、右手待時間の測定方法は明確ではなく、また手待時間といっても休憩時間ではなく、拘束時間であり、しかも各作業の準備あるいは他人の作業待ちにすぎないものであって、仕事の内容が前記のとおりであることは変わりなく、また仕上げ作業と出荷作業との間で手待時間数に差があるが、両者の作業時間が違うことを考慮すれば、単に手待時間の差から出荷作業に比較して仕上げ作業の方が肉体的、精神的に疲労が少ないと即断することはできない。また、」
8 同一二五頁四行目から一一行目までを次のとおり訂正する。
「しかし、本件においては、本件交通事故からの経緯は控訴人においても十分に把握できていたものであり、他方、安博が年休等をとらずに従来どおり残業や宿日直等の勤務を続けて精勤し、また病院に行かなかったとしても疲労のみで病院に行くことはまれであるから、安博に責められる点はなく、これらをもって安博が自己保健義務を怠り、損害額算定に斟酌すべき過失があるということはできない。また、安博が宿直当夜飲酒したことや裸で就寝したことと心不全の間に因果関係が認められないことは前述のとおりであるから、右事実は過失相殺で斟酌すべき事情にはならない。」と訂正する。
9 同一二六頁一行目「(請求原因5)」の次に「及び損益相殺(抗弁2)」を付加し、同九行目と一〇行目の間に次のとおり付加する。
「ところで、被控訴人富美子が、労働者災害補償保険法に基づき労災保険年金合計七四三万七四六六円を、葬祭料五三万一八四〇円の給付を受けたことは当事者間に争いがない。そして、右各金額を被控訴人富美子の逸失利益額六八一万三三五五円、葬式費一〇〇万円からそれぞれ控除すると、逸失利益につき残余はなく、葬儀費残は四六万八一六〇円となる。そうすると、慰藉料額一〇〇〇万円を加えた合計一〇四六万八一六〇円が被控訴人富美子の損害額となる。なお、控訴人は、被控訴人富美子が労働組合からの葬儀費四二万円を受取っていると主張するが、本件全証拠によるもこれを認めるに足りない。」
10 同一二七頁三行目「原告富美子につき一七八万円」を「損害額の約一割である被控訴人富美子につき一〇〇万円」と訂正する。
11 同一二八頁三行目「一二月一八日」を「一二月五日」と、同五行目「一二月一九日」を「一二月六日」と各訂正する。
二 よって、被控訴人らの本訴請求は、被控訴人富美子につき、金一一四六万八一六〇円及び内金一〇四六万八一六〇円に対する本件訴状送達の日の翌日である平成三年一二月六日から、内金一〇〇万円に対する原判決言渡しの日である平成七年七月三一日から各支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の、被控訴人晃代及び同教代につき各九二四万六六七七円及び内金八四〇万六六七七円に対する本件訴状送達の日の翌日である平成三年一二月六日から、内金八四万円に対する原判決言渡しの日である平成七年七月三一日から各支払済みまで各民法所定の年五分の割合による遅延損害金の、それぞれ支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないからいずれも棄却すべきところ、被控訴人富美子に対する本件控訴及び被控訴人らの本件附帯控訴に基づき、これと異なる原判決を変更し、被控訴人晃代及び同教代に対する本件控訴は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民訴法九六条、九五条、八九条、九二条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官中田耕三 裁判官小田八重子 裁判官德永幸藏)